Sunday, 8 August 2010

【Review】【Book】戦略プロフェッショナル・ベーシック・スキル

右肩上がりの経済成長が崩壊したため、既存の会社との関係が崩れた。筆者は終身雇用・年功序列の既存の雇用関係を「バインディングモデル」と定義し、そのモデルから人材が流動的な「モビリティモデル」へと移行していること、またそれに伴い人材として求められる要素が企業に対する忠誠心からマーケットバリュー(市場価値)へと変わったと述べている。
 そのような背景の中で、資格(ITや語学、またその他専門資格)取得が重要視されている向きがある。しかしながら、そのようなスキル(筆者はこれをテクニカルスキルと定義する)は時間によって重要性・有効性が変化するものであり、そこに傾注することはリスクが高いと警鐘を鳴らす。
 筆者はテクニカルスキルではなく、その前提であるコミュニケーション・スキル、コンセプチュアル・スキル、そしてプロフェッショナル・スタンスの取得こそが重要であると、25章に分けて以下のスキルを紹介している。
 コミュニケーション・スキルとしては「信頼形成」、「影響力」、「メタファー技術」、「対比技術」、「極論技術」、「ストーリー化」、「ディスカッション・コントロール」。
 コンセプチュアル・スキルとして「分類とラベリング」、「マトリクス」、「図式化と業務フロー図」、「数字のハンドリング」、「因果関係の把握」、「組み合わせ」、「サマライズ」。
 プロフェッショナル・スタンスとしては「パーソナルアイデンティティ」、「スペシャリティ」、「期待値調整」、「スタートダッシュの効用」、「テンションコントロール」、「コラボレーション」、「「憶病さ」の効用」、「セーフティゾーンの判断」、「セルフモニタリング」、「4年目の天狗」、「区切られた時間」。
 以上の25個の要素に関してその重要性と効用を述べているが、筆者が考えるスキルの在り方、つまりプロフェッショナル・スタンスを土台としてコミュニケーションとコンセプチュアルの両スキルが存在し、その上にテクニカルスキルがあるという考え方を考慮すると、全体を通じて一貫しているロジックが浮かび上がってくる。
 そのロジックとは自身のアイデンティティを設定することでスペシャリティ(専門分野)の確立を目指し、信頼性や影響力の向上を達成し、そのことによって仕事を獲得するというものだ。コミュニケーション・スキルやコンセプチュアル・スキルは信頼を獲得するための有効な手段ではあるが、その前提としてパーソナルアイデンティティが確立していることが非常に重要となってくる。
 筆者はパーソナルアイデンティティ(自身のドメイン)を設定する上で、must(すべきこと)、want(したいこと)、can(できること)の3点を考慮し、目指すべき方向性を定義して、その分野に集中することが重要だと述べている。また、ドメインの設定と達成、そして再設定を繰り返していくことが自身の可能性を拡げていくとしている。

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