Thursday 12 August 2010

【Review】【Book】不透明な時代を見抜く「統計思考力」

神永 正博
ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2009-04-15
 データを正確に分析する力は、自力でモノを考え社会でサバイバルしていく上で非常に大きな力になる。
 筆者は何か記事や論文といった文章を読む際には文章そのものより先にデータを読むことを勧めている。データを先に見る。しかも誰も解釈する前の生のデータを見る。そして自分の意見や仮説に反するデータを読む。これがデータを正確に読むための、また社会で何が起こっているか正確に分析するための第一歩だ。データを読むときにはその指標(例:合計特殊出生率)がどのようなロジックで求められているかということを把握する必要がある。また、データを読む時、人はどうしても一部のデータだけ見て判断を下してしまいがちになる。ゆえに常に違った方向からデータの分析を考えることが正確に物事を判断する上で必要となる。
 このような意識を持って臨むと「若者は本を読まなくなった」、「小泉政権以後、格差が拡がった」といったある種の通説に対する見方が変わってくる。
 データ分析をする上で、平均や分散、正規分布・べき分布、相関といった考え方は押えておきたい。分布の中にもガウス分布やワイブル分布といった種類が存在し、学ぼうと思えば奥が深いが、さしあたって重要なのは上記の考え方を理解すること。そして、データで分析したこと以上の事象が実社会では起こる(「事実は理論より奇なり」)ということ忘れないようにすることだ。
 データを見ることを意識し、データの読み方を知る事で社会の見方は確かに変わる。しかし、そこに囚われてはいけない。なぜなら実社会、特に経済現象においては私たちが全く予想だにせず、予測もできないような事象(ブラック・スワン)が想像以上に頻繁に起こっているからだ。
 筆者は末尾に「自力で考えることの最大の敵は、自分には分かっているという過信です。一番難しいのは正気を保つことなのです。正気を保つために、データ分析ほど強力な薬は他にないでしょう。」と述べている。
 ジニ係数を初めとした概念や分析手法を知り、データを分析する癖をつける。そして自身の分析に固執するのではなく常に違った視線からそのデータを分析するようにする。この2つを実行することで、統計思考力を鍛えていくことが、見通しが不透明な社会でサバイバルしていく上で心強い武器になるだろう。

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