Sunday, 5 December 2010

【Review】【Book】ヨーロッパ思想入門

「いったい誰が、どんな人が、幸福をかちとりうるのだろうか。人間の幸福は思い込みにすぎず、その思い込みさえも簡単に滅びてしまうのだから。」(『オイディプス王』より)という言葉が紹介されていて、今まで西洋古典を何となく読まずにきたけれど、ちゃんと読んでみようかなと思いました。年末に「オイディプス王」位は読んでみようかと思います。 
この本ではヨーロッパの思想の礎石としてギリシア思想とヘブライ信仰を挙げており、両者の歴史・変遷を丁寧に紹介してくれています。
 ギリシアの思想の本質は第一に人間の自由と平等の自覚であり、この考え方は今日のデモクラシーに通じています。
そして第二に理性主義があります。この考え方は移ろう現象世界の根底にはそれらを統括しコントロールしている恒常的な法則や秩序を見透かそうとする姿勢で、今日の科学の発展に繋がっています。世界を法則と理念の支配する秩序の世界として把握するヨーロッパ思想の源泉がここにあると筆者は指摘しています。
 次に、ヘブライ信仰の本質ですが、この信仰については3点筆者から指摘が挙げられています。
まず一つ目が唯一の超越的な神が天地万物の創造主であるとしているのが特徴であるということ。つまり宇宙の中のいかなるものも神ではないというアニミズムの放棄であり、これもまた本日の自然科学が成立するための精神的背景になっているそうです。
 ヘレニズム信仰の特徴の第二点は、この唯一の神(創造主)が「自己の似姿」として人間を創造したという点。神は愛の相手としてある意味で自身と対等な存在者としての人間を創造し、人間の「かけがいのなさ」は人間が「愛をうけうる者」として、唯一絶対の神の似姿に由来するというのがこの点ポイント。
 そして3点目は、イエス=キリストによって明らかにされたこの神の限りない優しさと筆者はしています。
 上記の2点、つまりギリシア思想とヘブライ信仰がヨーロッパ哲学の礎石となっているらしいです。
 この本はこの2点に加えて近現代の哲学、ハイデガー・レヴィナス辺りまでを紹介してくれています。哲学はまったく勉強したことのない椎名でも分かり易く読めたので興味がある人には良い本だと思いました。

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